アーティスト、アートディレクター 1970年東京都生まれ。コラージュ、写真等の作品を制作、個展、グループ展で発表をしている。2003年、第6回文化庁メディア芸術祭デジタルアート優秀賞受賞。同年、トーキョーワンダーウォール公募2003・ワンダーウォール賞を受賞し東京都庁で個展を開催。2008年夏には”永戸鉄也トーキョーツアー”と題し東京都内3カ所で個展を同時開催した。高校卒業後渡米、帰国後96年より国内トップアーティストのCDジャケットデザイン、映像制作に携わる。
- PTZ-631Wとモバイル時はPTZ-430
- 2002年?
- Macを初めて買ったときにタブレットを購入した。そのときは使いこなせず断念、数年後仕事で会った人たちから進められて使い始めた。PCからマウスを外して4年たちます。デザインも映像編集もインターネットもタブレットです。
(c)2006 tetsuya nagato All right reserved.
緻密に組み合わされたフォトコラージュで独自の世界を展開している永戸鉄也さん。作家としての個展活動をはじめ、UAのCD/DVDジャケットや平井堅のプロモーションビデオ制作、雑誌や広告と幅広く活動しているクリエイターとして注目を集めています。
そんな永戸さんが、タブレットと出会ったのは8年ほど前。アメリカ留学から帰ってきてイラストレーターとして活動しはじめたときでした。デジタルフォトコラージュで作品を作るために、コンピュータと一緒にタブレットも購入したのです。「でも何かしっくりこなくて…。タブレットに描いている感覚と、画面上のポイントが動いている感覚に微妙なズレを感じて、使い方を追求せずにすぐにやめてしまったんです。今より細かく設定ができなかったからかもしれないなあ…」
それからはずっとマウスでの作業。手描きっぽく仕上げたいときもマウスを使うのが当たり前で、タブレットを使うというイメージさえ思い浮かびませんでした。
ところが……。
2003年はじめに、スタイリッシュな音楽で海外でも人気の高いAIRのプロモーションビデオをディレクションしたときから、永戸さんとタブレットは急接近しはじめたのです。「アニメーション作品だったので、僕の絵をアニメにするためにオペレーションしてくれる映像作家の方たちとの共同作業でした。そのとき、彼らはみんなAdobe After Effectsの操作をぜんぶタブレットで行っていました。」
そのとき、『マウスより絶対にタブレットの方がいいよ』とすすめられましたが、8年前の記憶があったために永戸さんは疑心暗鬼。
その後すぐに、平井堅のプロモーションビデオで背景のコラージュを制作したときにも、一緒に制作したデジタルフォトグラファー「ムラカミミノリ&ゾレンゴール」がタブレットを使っていて、『フォトレタッチの微妙な感じがこれだと出せるんだ』と、ここでもすすめられました。
試しに触ってみると「これはすごいかもしれない」と感じるほどにタブレットへの印象は変化し、個展のための作品をタブレットで作ってみようと思いました。「それで使いはじめたら、一瞬にして『コンピュータを使うかぎり、これしかないだろうな』って思うくらいタブレットがなじんでしまいました。今のタブレットって、これ以上進化できるのかなというぐらい自然に描けますからね。コンピュータを買って以来のすごいものだって、みんなにすすめています」と笑う。
8年を経て、永戸さんは進化したタブレットを再発見することになりました。
タブレットを使い始めたときに、何ができるのかいろいろ試してみたそうです。筆圧を調整したり、どれくらいまでスムーズに描けるのかなど遊びながら試すうちに、いくつかの発見がありました。その発見が自然に作品の中に活かされるようになり、ちょっとした変化をもたらしたと言います。
「マウスを使っていたので、今までは鉛筆っぽい感じで線を描くことはできませんでした。でもタブレットを使っていると、『シャシャシャー』いう感覚の線が描けるので、コラージュの中で鉛筆っぽい線を入れはじめるようになりました」
今まではこうしたタッチの線が必要なときには、紙にペンや鉛筆で描いたものをスキャニングしていたとか。ですがスキャンして合成する場合は微妙に合わないのでやり直すということも起こります。タブレットで直接描けば、こうした作業の無駄がなくなるのもうれしいメリット。
「同時進行でコンピュータの中で作ることができれば、無駄な作業のためにテンションが落ちることもないわけです」いかにテンションを持続させて制作するかは、いい作品を作る上で重要なカギです。
「コラージュで作品を作っている僕は、もともとデジタルで描くことはしていなかったのですが、それがタブレットを使うことで自然に手描き感覚を融合できるようになりました。今後こういった手法が増えてくると思います。クリエイターには、筆にしろ、墨にしろ、描く道具があるのなら、それを追求して表現してみたいという気持ちがありますから」
作風の広がりとともに、永戸さんがタブレットを使って良かったと思う点が二つあります。
一つは体が楽になったこと。仕事や個展などが重なって追いつめられているときは10時間以上作業することもしばしば。マウスを使っていたころは腕から痛みが走り、肩がぱんぱんに張ってしまうことも。かつて腱鞘炎になってしまったほど大変でした。ところが、タブレットを使うようになってから、こうした悩みが解消されたと言います。
そしてもう一つが、作業効率がアップしたこと。「ベジ曲線でマスクを切るような作業は格段に効率よくなりました。マウスの速さで満足している人も、タブレットの速さには驚くと思いますよ」
緻密なコラージュで作品を作り上げていく永戸さんにとって、作業効率アップは大きな問題。例えば、瓦や物差し、錆、ライトなどを細かくコラージュして作り上げた門のイラストでは、選択ツールで部分だけとった写真素材をレイヤーで重ね、消しゴムツールで部分的に消してなじませています。
パスで消すより消しゴムツールで消した方が、作業に勢いが出て集中してできる利点がありますが、細かい作業の連続です。「消しゴムツールは大きなサイズを使うのではなく、小さなサイズで細かく消していった方が自然で面白いニュアンスが出せます。細かい作業ですが、タブレットになってから早くなりました」
また、タブレットの筆圧機能を利用して、ぼかしツールでぼかしを強くかけたり、弱くかけたりというようにランダムに作っていくことで、写真のなじみを良くする作業効率もアップしたとか。「デジタルの中にアナログ感が出て不思議な感じになります。自然な感じと自然ではない不思議な感じを同居させることで深みを出せるのです」
タブレット導入で永戸さんの作業は格段に効率アップしました。ところが、作業時間自体は、あまり変わらないと言います。それはなぜ……。「細かい作業が簡単に早くできるので、今までマウスでは時間がかかりすぎるのであきらめていた作業もやり始めたから。つまり、タブレットを使うことによって、クオリティの高さをドンドン追求していけるようになったわけです。作品の完成度はますます高くなっていきますね」
変わらない時間は、新たなクリエイティブ作品を生み出すための時間が増えたため。クリエイターにとって、それこそ必要な時間です。
タブレットは、筆圧などの多彩な機能だけでなく、クオリティ追求の時間をも作り出す道具、まさにクリエイターのための道具と言えるのではないでしょうか。
1970年東京都杉並区生まれ。高校卒業後渡米、南フロリダ大学中退後、作家活動を開始。
現在、アーティスト・グラフィックデザイナー・ディレクターとして雑誌・CD・PVを中心に活動をしている。
- 個展 RAGTIMELENZSHOW 高田馬場 BENS CAFE
- WINDOWS EXPO デジタルクリエイターズワールド出展
- 10月個展 蔵前 KITCHIN SOLT
- イラストレーション誌年度賞入選
- 5月個展 groupvision 青山 蜂
- 9月グループ展 我々は外野である 経堂appel
- 11月グループ展 DIGITAL BAROQUE 原宿EX’REALM
- 第6回文化庁メディア芸術祭デジタルアート
(ノンインタラクティブ)部門 優秀賞
/東京都ワンダーウォール公募2003 入選
9月個展 ホチキス 中目黒 DEPOT
/9月個展 こわれもの 外苑前 ミュゼオピクトリコ











